1962(昭和37年)/6/10公開 171分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12780
配給:東映 製作:東映
江戸の大火で無一文となった大工の若棟梁が、裸一貫焼け出された浮浪児たちを育てるおりつとともに焼野の江戸に雄々しく立ち上がる山本周五郎の同名小説を、名優・中村錦之助と巨匠・田坂具隆監督が庶民の人情や哀歓を絡めて味わい深く綴った人間味溢れる珠玉の名篇。 中村錦之助と江利チエミの初顔合わせに、中村賀津雄、東千代之介、河原崎長一郎、桜町弘子、夏川静江、木暮実千代、織田政雄、東野英治郎、千秋実、藤原釜足、渥美清らの錚々たる実力派演技陣を配した豪華キャスト。
神田の名匠大工「大留」の若棟梁・茂次は、初めて任された川越の仕事に張り切っていた。そこへ江戸に大火があり「大留」も丸焼け、両親も焼け死んだという悲報が届いた。悲しみに耐えて川越の大仕事を仕上げた茂次が神田の仮小屋に戻ると、幼馴染のおりつが大工たちの世話をしていた。だが呆れたことに焼き出された浮浪児を五人も養っていた。茂次は米問屋上州屋の大口仕事を請け負い、親友の材木問屋から三百両を借りて「大留」建て直しに必死になっていて、子供たちを元の町内に帰せとおりつを叱る。おりつは町内の迷惑そうな眼や捨てられると知った子供たちの自棄っぷりに放り出すことも出来ず、焼け跡の土蔵に一緒に住むことにした。ある日、米を売り渋る上州屋に激怒した人々が直談判に押し掛けて米を強奪し、茂次の普請場を滅茶苦茶に荒らし回った。その騒ぎの中で茂次は浮浪児の世を呪ったような目つきを見て衝撃を受ける。茂次はつれなく追い出したおりつや子供たちを連れ戻して家に引き取ることにした。そして読み書きを覚える子供たちとおりつの喜ぶ顔を見て、茂次もしみじみ嬉しくなってくる。茂次は、おりつや子供たちの明るく元気に生きている姿に、素っ裸になって雑草のように生きることを学んだ。茂次が子供たちのために特別の部屋をこしらえてやると、おりつはその部屋を“ちいさこべや”(小さい子の部屋」と名付けて喜んだ。やがて江戸の焼野原に復興の槌音が響きはじめた。