1957(昭和32年)/4/16公開 87分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:10096
配給:東映 製作:東映
時は幕末、物情騒然の世相を縫って、水煙火焔二刀の秘密を守る美剣士・源氏九郎と愛憎に絡む女二人。勤皇佐幕の殺刀乱舞して激情を織る青春風雲篇。
幕末、弘化元年(1844)。箱根街道を一人急ぐ老剣客・大坪左源太がいた。三島神社の武道奉納試合に家伝の名刀・火焔剣の真偽を試すためだった。ところが、その剣を奪おうとする幕府隠密刺客団黒手組の副隊長・仙藤鬼十郎一味が彼を襲う。左源太は斬られてしまうが、その場に忽然全身白ずくめ美剣士・源氏九郎が現れ、仙藤たちを撃退し、左源太の遺言に従って火焔剣を預かり、奉納試合へと向かう。同じ頃、またこの火焔剣を追う勤皇革進派の公卿・桜小路忠房と勤皇の志士・頼三樹三郎の一行がいた。さらには、同じく火焔剣を持った備前邑久藩の家臣・早川要之進も試合の場に急いでおり、その後を追う故郷を出奔した許婚の織江がいた。織江の祈りも空しく試合は、一瞬にして要之進は斬られ、勝負は決してしまう。その静寂を破るように宝物殿の水煙剣が盗まれたと神官が報じ、源氏九郎は火焔剣を手に風の如くその場を立ち去る。さて、水煙剣を盗み出したのは、盗賊の磐城屋仁兵衛とその片腕の狐小僧佐平だった。二人はその昔、義経の後見者であった金売吉次の墓を暴いて古文書を発見。火焔水煙両剣に刻まれた謎を解けば、義経が後白河法皇から下された財宝の所在が分かるのだった。だが二人が江戸に戻って、水煙剣を調べてみるとあに図らんやそれは偽物だった。そして仁兵衛は、この奉納試合を主催した老中・多田信濃守が怪しいとにらむのだった。また一方、朝廷に伝わる古文書で両剣の謎を知った桜小路忠房は、その財によって倒幕を企んでいた。さらに九郎を許婚の仇と狙う織江もいた。だが、藤原宿の寺で要之進の供養を営む九郎の姿に狂おしい心になる織江でもあった。江戸に入った九郎は、幾度ならずも火焔剣を狙われるが、すべてうまくかわし続ける。そんな中、多田信濃守から本物の水煙剣を盗み出した仁兵衛は、娘のお妙を使って自らの寮に九郎を誘き寄せ、火焔剣を奪わんとするが、父の悪計を知ったお妙が身を持って九郎を庇ったことから乱闘に発展。折も折、水煙剣を盗まれたと知った多田信濃守は、九郎も仁兵衛の寮にあると知り、乾坤一擲両刀を一気に奪わんと黒手組の全勢力を差し向ける。また、この状況を知った頼や忠房の勤皇一派も寮に押し寄せる。彼我入り乱れての激闘の果て、仁兵衛は裏切った佐平に斬られてしまう。追いすがる勤皇一派や黒手組を振り切って佐平を追う九郎。その佐平の行く手を織江が遮る。今はすべてを忘れ、九郎のためにと佐平の揉み合いになる織江であったが、佐平に斬られてしまう。この隙に追いついた九郎は、一刀のもとに佐平を斬り捨て、水煙剣を握るのであった。織江の亡骸をかき抱き、慟哭する源氏九郎。その正体とは、判官義経の末裔であった…。