1960(昭和35年)/6/7公開 56分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11766
配給:東映 製作:東映
郊外で嬰児殺害事件が発生し、出動したお馴染み刑事グループの前に暴露される複雑で醜い人間群像。現代の世相を鋭く捉えて絶賛を博した名物シリーズ第十三話。
平和な春の郊外、野犬が嬰児の死体を発見した。検死の結果、死後1~2日、誕生は2月末、血液はO型であった。林、金子の両刑事は、現場附近から見つかった嬰児のおむつの手拭いに書かれた酒屋“伊浪”を手掛りに親許を洗い始めた。一方、長田部長刑事と山形刑事も、嬰児の肩にある“アザ”を手掛りに親許を捜査、早朝の街に忙しく散っていった。
昼頃、この二組の捜査陣は、アパートひかり荘でバッタリ顔を合わせた。二筋の捜査が一致し、嬰児はひかり荘に住む吉本夫婦の子供であることが判明したのだ。吉本夫婦は、留守であった。管理人の話では、父親の吉本は女を作り半年ほど前から妻と別居中。母親の安子は、浮気な良人の愛情を掴み戻そうと赤ん坊を生んだのだが、男の愛情が戻らないばかりか、生活も貧しくなるばかりで、事件発生3日前に吉本に赤ん坊を押しつけてきたらしいとのこと。夫婦の複雑な内情がおぼろげに判明した。更に事件当日、吉本から安子へ呼び出しの電話があったとの重要な証言を得た。“ひょっとすると、吉本は安子も?”一瞬、暗い推理が一同に浮んだ。俄然捜査は本格化し、渡辺刑事は、ひかり荘に張り込みを続けた。山形刑事は安子の実家へと飛んだ。金子、林両刑事は、吉本の勤め先である東郊不動産を探った。
安子の実家は貧しい桶屋だ。彼女の母はヒステリックな水商売上りの義母、父は気の弱い男、それに6才の女児と三人暮し、家庭は安子に対して冷たかった。安子は一時、勤務先の旅行案内所長の野崎と同棲したことがあったらしい。それは、冷たい家庭から独立したいという気持からで、吉本と結婚してからも、野崎は執拗にヨリを戻そうとしていたとか。事件当日、吉本は勤めを休んでいた。古本は安子との別居中、小料理屋“浮世々”に一時下宿していたが、その女将から、同店の道子と関係を結び、目下は、娶児の死体発見現場近くのアパートに移転していることがわかった。しかも、道子は、妊娠4ヵ月で入院中、吉本は一人でいたわけだ。
捜査の焦点は吉本に向けられたが、吉本はアパートヘ帰ってこない。吉本への疑惑は一層深められた。安子もまた、依然としてひかり荘に姿を見せない。やがて焦燥する捜査本部を嘲笑するかのように安子が轢死休となって発見された。
遂に吉本がアパートヘ姿を現わし、その場から運行された。彼の言によれば事件の日に安子ヘ電話したのは、安子と縁を切るために安子に邪心を持つ野崎に逢わせるためだったという。彼は事件当日、安子とは逢っていないと、強く犯行を否定した。殺された子供だって自分の子か野崎の子か知ったもんじゃない…と追求する刑事たちを唖然とさせる吉本の態度。しかし、吉本の血液型は嬰児と同じO型だ。折も折、野崎と安子らしい男女が泊ったという旅館の女中が現れた。しかもそれは事件の当日。捜査線上には新たに野崎という男がクローズアップされる…。
「警視庁物語」シリーズ(24)