1960(昭和35年)/6/21公開 52分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11761
配給:東映 製作:東映
「警視庁シリーズ」第14作。多摩川に浮び上った中年男の溺死体をめぐって巧妙に仕組まれた犯罪罠を、七人の刑事が血のにじむような苦闘の中にひもといてゆく。
春のある日、捜査第一課へ老婆・松本うめが、靴屋を営む息子の石川平作が突然行方不明になったと訴えてきた。失踪―殺人、七人の刑事の予感は不吉な連想を呼んだ。
予感は当たり、鑑識課からの通告で発見された身許不明の溺死体が老婆の依頼する石川平作と判明。更に老婆の証言によって、彼が所有する駅前の土地が何者かの手によって売却されていたことが判明する。計画的な殺人事件と睨んで、捜査は犯人の逃亡を恐れ、捜査本部を設けずに内密に活動を開始した。
平作の土地はクリーニング屋が買っていた。平作の息子・石川一郎と名乗る男から買ったというのである。平作はたしか独身であった。石川一郎の人相は丸顔で眼鏡を掛けているとか。だが石川一郎に土地売却を頼まれたブローカー小野が語る石川の人相はまるで違う。石川一郎は二人いるのか?それともクリーニング屋かブローカーの小野が偽わりの証言をしたのか?捜査は混乱した。平作が失踪前に依頼されていたという踊り子の靴の行方を求めていた長田部長刑事と金子刑事は、その靴が石川一郎から古道具屋へ売られていることをつきとめ、古道具屋の主人から石川一郎の人相を聞き出した。その人相は、クリーニング屋の証言と一致する。ブローカーの小野はなぜ嘘をついたのか。小野についての裏付捜査が行われた。小野は偽名を使っており、本名は秋田清、地面師の前科がある男だった。
平作の事件当日の足取りを調査した長田部長刑事、金子刑事は、事件の夜、平作が梅寿司に姿見せ、二人前の寿司を注文した事実を掴んだ。梅寿司は寿司を届けたが、それ以後の平作の足取リはばったりと絶えていた。
寿司を届けたというアパートの部屋は以前、嬰児殺し事件で、七人の刑事も顔なじみとなっていた吉本とその情婦・道子が住んでいる一室だった。張り込みを行い、道子が連行された。女は黙秘権を使ったが、長田部長刑事と捜査主任の巧みな追求の前に遂に平作殺しの全貌を自供した。それによると、平作の土地に目をつけた吉本は、道子を使って平作をアパートヘ誘惑、湯槽に沈めてこれを殺害したという。更に、溺死体に見せかけるため、二人で多摩川に投げ込んだのである。道子は冷たくなった吉本の愛をつなぎとめようとして、この殺人を手伝ったのだった。秋田は、吉本が東郊不動産に勤務当時、同僚であったことから、土地の処分を手伝って吉本の犯行を成功させ、儲けの二割を得ようと捜査に対しても嘘の証言をついたわけである。
事件の全貌は判明した。しかし吉本は依然姿を見せなかった。そこで捜査は、秋田を利用し、吉本の新しい女邦子を通して残されたもう一つの土地売却の金を渡すと伝えさせ、呼び出しを計画した。
邦子が働く喫茶店“スワン”には眼鏡をかけて社長風に変装した長田部長刑事と囮の秋田が待つ。六人の刑事たちも“スワン”の周囲を固めていた。作戦は成功し、吉本が現れた。長田部長刑事を土地売却の買い主と信じて吉本は高級車に同乗した。吉本は車の行き先が警視庁だとは知らなかった…。
「警視庁物語」シリーズ(24)