1960(昭和35年)/11/29公開 89分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11796
配給:東映 製作:東映
白バイの雄姿に憧れた九州男児が交通機動警ら隊に入り、失敗を重ねながらも持ち前の豪快闊達さにもの云わせ、凄いスピードで凶悪ギャング団を壊滅する無類の痛快作。
九州は阿蘇山麓の郷里を後にした梶村五郎は、九州~東京間を愛用のオンボロオートバイで走破しようという快挙に出た。汗にまみれ、ほこりに汚れ、それでも五郎のオートバイは、なんとか東京にたどり着くことが出来た。ところで都心に入った途端、五郎はスピード違反で白バイに注意されるという失敗をしでかしたが、その時以来彼は、颯爽たる白バイの勇姿にすっかり魅せられてしまった。それから二年、五郎は見事交通機動警察ら隊の試験を突破した。しかしそこには、五郎の飾り気の無い率直な心に惚れ込んだ清水部長の陰の尽力があったからである。五郎のオートバイ好きは凄まじいばかりで、白バイに乗れば公然とスピード違反が出来るんだというそれだけの理由で警ら隊員となった彼の無邪気さは、時として清水部長を渋面させたが、彼はいつか五郎の性格を兄のような気持ちで愛していた。無事教程を修了した五郎は、清水部長の家に下宿をとり、そこから署に通勤することになった。清水には、ガソリンスタンドで働く美しい妹・愛子がいた。そして、五郎と愛子はいつしかお互いの慕情を秘めあう仲になっていった。
さて五郎たちがいよいよ街へ白バイを走らせる日がやって来た。ところが五郎は、就任早々の事もあったが、野犬を引いた自動車をひき逃げと早合点、逆にねじ込まれるという慌て振り。それは、まだいい方で、同僚山野に至っては、路に迷うという白バイの隊員らしからぬ態たらくだ。そんな中にあって一人、三沢だけが成績を上げていた。母を交通事故で亡くした三沢は、その悲しみと怒りが、彼を冷酷なほど違反に対して執拗な行動に駆りたてさせるのだった。タクシーの運転手・長谷川も、三沢に挙げられたばかりに、会社をクビになってしまう。五郎は、三沢とどうも性格が合わなかった。ある昼下がり、五郎はカミナリ族を補導に出かけたが、持ち前のスピード狂が災いして、オートバイ喫茶の女カミナリ族・千加と抜きつ抜かれつの大接戦を演じているところを運悪く三沢の眼にとまり、忽ち上司に通告され、白バイを下ろされてしまった。
その頃、都内に銀行ギャング事件が突発、オートバイに乗り組む五人組の凶悪犯人を追って各所に非常線が張り巡らされた。緊急時とあって五郎も再び白バイ乗車を許され、清水部長と共に部署についた。ところが、五郎が一斉検問にひっかかって困っている歌手・江島ミドリの自家用車を誘導し、開演時間に間に合わせてやっている間に、清水が凶悪犯にひき殺されてしまったのである。責任を感じた五郎は辞表を提出した。五郎の手に残されたものは今は遺品となった清水の警笛が一個。犯人は必ず自分の手で捕まえると、しっかりその警笛を握りしめるのだった。その日から五郎は、犯行現場に残された唯一の証拠であるタイヤの跡を頼りに、死物狂いの捜査を開始した。下宿にも寄らず、愛子にも告げずに必死の捜査が夜も昼もなく続いた。その甲斐あって五郎は、タイヤの出所である東信車輌工場を探し当て、そこに工員として潜り込むことに成功した。一方、三沢もまた東信車輌に探りを入れるが、以前三沢に挙げられた運転手の長谷川が意外にもここに働いており、白バイ隊員であることを見破られて倉庫に監禁されてしまった。予想通りこの東信車輌は、社長の高松をはじめ、大木、長谷川ら銀行ギャングの巣だったのだ。そして彼らの間には外人ナイトクラブを襲う計画が企てられていた。五郎の正体を知らぬ一味は、彼をその襲撃の仲間に加える。いよいよその日、五台のオートバイが街へ出発した。計らずもその一群の中に、消息不明の五郎の姿を認めた愛子は、疑惑をもって警察に通報した。だがこの愛子の挙動は早くも一味に覚えられていた。オートバイは勢いづいてナイトクラブに乱入、あっという間に莫大な札束は奪われた。五台のオートバイは待機されていた幌トラックに収容され、幌トラックは難なく非常線を突破していった。五郎は一味の隙を見すまし、幌の間から通信文をひそませた清水の遺品の警笛を地上に落とした。その頃、東信車輌では、三沢と愛子が拳銃で取りまかれていた。工場に帰ってきた五郎は、愛子を見て表情を変えた。それを高松たちが見逃すはずがなく、素性を見破られた五郎は、三沢と力を合わせて一味と闘った。この闘いの中で五郎と三沢の友情が結ばれる。折も折、地上に落とした五郎の通信文により、警官隊が乱入。高松は、オートバイを駆って必死に逃走した。追跡する五郎たち。形相凄まじい高松は、方向を変えて五郎のオートバイに反撃を企てた。だがその一瞬、高松は鉄柵に衝突、崖下へ転落して行った。かくて、ギャング事件は解決、五郎も、隊長の温かい思いやりによって警ら隊に復帰することが出来た。颯爽たる五郎の姿を愛子の微笑が見送る。晴れ渡る東京の空の下を、交通機動警ら隊の隊列が堂々と行進していった。