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姿なき暴力 

Shapeless Violence

1960(昭和35年)/12/6公開 61分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11974 
配給:東映 製作:東映

父母に愛想をつかした少年が上京するが、苛酷な現実は彼をチンピラの世界に押しやる。愛情を注ぐ者、非情な者、大人の世界と対比させつつチンピラたちの孤独な青春を描く。

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ストーリー

騒音の盛り場――きらめくネオンの下に享楽を求めて集まる人の群。その中をわがもの顔にチンピラたちがのし歩く。とあるパチンコ屋の前「旦那、煙草買いますよ」馴れぬ小声で客に呼びかける景品買いの少年は、未だ清純な面影を残している新入りのチンピラ・浜口浩だ。浩の故郷は貧しい漁村だった。父の純吉は競輪狂いがもとで人を殺めたことから刑務所に留置され、母の松子はそんな夫に愛想をつかして、とうに家を出てしまっていた。こんな逆境にある浩に対し、何くれとなく好意を寄せる女教師・滝先生の計らいで、浩は東京に職を得て上京した。しかし都会の厳しい現実は、孤独な一人の少年をも容赦しなかった。やっと就職したジュース工場はつぶれ、浩は町のチンピラ近藤とふと知り合ったのが縁で、遂に愚連隊の群に身を投じてしまったのだ。麻雀に明け喧嘩に暮れるチンピラたちの奔放な生活は、浩の若さを刺激した。ある日、兄貴分・黒木の命を受けて近藤、安川、鈴木ら仲間たちとパチンコ屋“明星”に殴り込みをかけた浩は、仲間の先頭に立って、憑かれたようにパチンコ台を叩き割るという果敢な行動を見せた。チンピラ仲間の少女・明子は、そんな浩にいつしか想いを寄せていた。狂熱的なダンスの夜、二人は激しく抱き合った。だがこの殴り込みがもとで、間もなく浩は警察に留置されてしまった。たまたま上京して浩を尋ねた滝先生は、手錠の傷痕も痛々しい教え子の変わり果てた姿を胸をつかれる思いだった。釈放された浩は滝先生に励まされ、スポーツ店主・直井の紹介でスポーツ用具製造工場に勤める事となった。汗にまみれて浩は懸命に働いた。彼のまわりには、同じ滝先生の教え子で同郷の倉本、沖山、石井光江など新しい友達が出来ていた。秋晴れの日曜日、倉本たちの元気な歌声が美しい渓谷に流れていった。愉しいピクニック、しかし浩の心は何故か虚ろだった。川原でダンスに興ずる少女たちの中に、浩はいつしか恋人・明子の面影を追っていた。焼けつくように明子が恋しかった。その夜、酒を飲んで帰宅した浩は、工場主・山本の妹・幾子から、烈しい屈辱の言葉を浴びせられる。しかも浩が彼女に反抗の目を向けたということから紹介者の直井にまでが叱責され、遂に浩は工場を飛び出してしまった。盛り場へ舞い戻ってきた浩を迎えて、明子やチンピラたちのどんちゃん騒ぎが開かれが、浩の心は荒れていた。暴行、恐喝と浩の目に余る行動は、再び警察の指名手配を受けるまでになっていた。「いざという時には役に立つ兵隊だ」そう考えてチンピラの世話をしてきた黒木は、自らの身に警察の手が伸びるのを恐れ、浩に東京を離れるように命じる。久しぶりに踏む懐かしい故郷の土。見渡す限りの青い海原、白い渚、浩はそこで滝先生と会った。「東京へはもう行かないで…」懇々と諭す滝の目に涙が光った。ほのかな期待を抱いて母を訪ねる浩。しかし新しい夫に気兼ねし、生活に追われている母に今更なんで頼ることが出来よう。暗い田舎道を泥酔した浩が行く。「先生、おらぁ駄目なんです。どうすりゃいいんだよう!」浩は身をかがめていつまでも慟哭した。再び東京へ戻ってきた浩の荒みきったその横顔には、かつての少年らしい面影は消えていた。一方浩に好意を抱くかつての友人・倉本は、今一度浩を更生させようと滝先生の手紙を持って彼の行方を追っていた。だが浩はその頃、池袋の愚連隊に痛めつけられている仲間の鈴木を救ったことから、愚連隊の復讐を受けていた。鉄拳が飛び、ドスがうなる。浩の必死の抵抗も空しく、一瞬ひらめいたナイフは彼の胸に突き刺さった。泥と血にまみれた浩の死体。倉本が駆けつけた。「死ぬな浩、生きるんだよ…」抱き起こす倉本の口からぶつけようのない怒りの言葉が漏れた。きらめくネオンの中を浩の死体を乗せた救急車が遠去かる。それを明子が虚ろな瞳で見送っていた。

姿なき暴力 
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