1962(昭和37年)/5/1公開 109分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12640
配給:東映 製作:東映
朱雀帝の頃、最愛の人、榊の前を失い、都を追われた天文学者・安倍保名が、悲しみの流浪を続けるうち、榊の前の妹・葛の葉姫と、葛の葉姫に化けた白狐に亡き恋人の面影を求める悲恋大作。
年の昔、今日の都に白い虹がかかり、それに続いて様々な変事が起り、人々は不安な思いに閉ざされていた。時の天皇・朱雀帝をはじめとして大臣たちは、天文学者・加茂保憲に中国の秘伝書「金烏玉兎集」を解読し、変事の原因を突き止めるように命じた。阿部保名、芦屋道満の二人は保憲の高弟。保憲はいずれかを加茂家の跡継ぎにと眼をかけてきたのだが、養女・榊の前を愛する保名のひたすらな勉学態度にくらべ、とかく権力に結びつこうとする道満を次第に疎んずるようになった。保憲の後室と通づる道満は、秘伝書の解読を終えて御所に参上しようとする保憲を、家来の悪右衛門を使って暗殺し、秘伝書を奪った上、その罪を保名と榊にきせてしまった。激しい責苦に身も心も疲れきった榊は自殺――愛するものの死に正気を失った保名は、後室を切り捨てると、秘伝書を取り返し、榊の面影を求めて流浪の旅に出た。数日後、榊の故郷・信太の里に辿りついた保名は、榊に瓜二つの妹・葛の葉に出会った。保名は、榊の面影を宿す葛の葉の手厚い看護を得て幸せだった。葛の葉もまた、榊の身代りを悲しみながら、いつしか保名に深い娘心を寄せていた。しかし、美しく静かな信太の里にもやがて破局がきた。東宮桜木の宮に御子のない事が世の混乱を招くのだ、という後室の兄・岩倉治部大輔の進言が受け入れられ、呪いに必要な白女狐狩りにやってきた悪右衛門が保名を発見し滅多打ちにすると葛の葉を連れ去ってしまった…。