1959(昭和34年)/4/21公開 89分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11169
配給:東映 製作:東映
明るくたくましく、ただ愛ひとすじに生きる母と子。春の野につつましく咲き出づる母子草の花の様に生さぬ仲の母と子が寄りそって懸命に貧しさと闘う社会映画。文部省特選
富士山が真っ白に雪をかぶる早春、山麓に並ぶ山村の町。小沢しげは小さな洋裁店を営んでいた。しげは長女の睦子、高校一年の秀一、末弟浩二の三人の子供をかかえ、女手一つで良人亡きあとの家庭を一途に守って生きてきた。長女の睦子は幼い頃から教師を目指し静大を希望していたが、ある日、戸籍謄本に「継母しげ」と記されているのを発見してしまい落ち込む。しかし、藤本先生から睦子の実母は秀一を生むと高熱で死んでしまったことと、しげが懸命に睦子達を育てたことを知り、悲しみは激しい感動に変わっていった。やがて睦子は静大を卒業し教師になった。睦子が小学校の一年生を受け持った時、母を持たない陽子は危険な習癖を隠していたが睦子を慕ってきた。睦子は陽子の父高山義彦と会うが、高山は次第に睦子に好意を抱くようになる。秀一は東大進学のために勉強し、浩二は新聞配達をして家計を助けた。秀一は結局進学に失敗し炭鉱で働いていたが、ある日一通の電報が悲報をもたらした。秀一が怪我をして失明したのだ。しげの許には時折秀一から手紙が届いた。それは点字の手紙だった。しげも点字を学んだ。手紙にはこう書かれていた。「懐かしい故郷も、今は春の真っ盛りでしょうね。いつかお母さんにお送りした母子草も吹いているでしょう。“盲いたるまぶたに咲けり母子草”・・・」しげの瞼に涙が光った。しげは睦子を見た。睦子も泣いていた・・・