1961(昭和36年)/1/9公開 85分 カラー シネマスコープ 映倫番号:12116
配給:東映 製作:東映
類稀な天性を持つ美空ひばりの魅力を引き出して大ヒットした「べらんめぇ芸者」シリーズ第4作。
世は上げてアフリカブーム。御馴染み「松の家」の一人娘で売れっ子芸者の小春姐さんは、折から来日中のアフリカコロンダ国の国王アジバ六世の歓迎会で艶やかな舞姿を御披露したのが縁となり、すっかり国王と親しくなる有様だ。コロンダ国は世界屈指のダイヤモンドの産地で、早くも鉱山の発掘権利に目をつけた山中産業会長の山中は、ソビリカ共和国と手を組んでアジバ六世お気に入りの小春を利用し、権利書に王のサインを取りつけようと虎視眈々とチャンスを狙っている。
一方日本政府も、アジバ六世は開発援助の協定調印を控えた大切なお客様とあって、外務省アフリカ課勤務の花村健一をお守り役に差しむける程の気の使いようだ。何とか外務省の裏をかき、権利書にサインを取ろうとする山中一味は、「松の家」の借金五十万を帳消しにすることで小春と手を打とうとした。折も折、宴会の席で花村と顔を合わせた小春は、彼こそ小春の面前で二度までも女性に手切金を渡すという憎むべきドンファンであることに気がついた。花村こそ全女性の敵…持って生まれた鉄火肌の小春姐さん。それが山中の陰謀とは知らず、彼の提案を受け入れてしまった。権利書のサインをめぐって遂に花村と小春の間に宣戦が布告された。だが小春と国王との間は益々親密さを加えるばかりで、慌てた花村は国王を連れて秘密裡に親善旅行に旅立った。しかし日光、鎌倉、箱根、熱海と二人の行く先々に小春が神出鬼没の姿を現す有様、これにはすっかり手を焼いた花村は初めの意気も何処へやら、小春に対してもっぱら低姿勢に早代わりした。小春もこの旅行中、花村が意外に素直な好青年である事を知り、快く休戦協定を受け入れていた。
その頃、山中一味と結託しているソビリカ諜報員アイチョフらは一気にダイヤの発掘権獲得を謀り、京都見物中の国王を襲った。卑劣な山中たちの行動を目のあたりにした小春は、自分の任務に不安を覚える一方、この格闘で見せた惚れ惚れするような花村の腕力に、さすが鉄火な決意もいつしかぐらついてきた。しかも花村のかつてのドンファン振りは彼の上司・白井課長の命令によるものと判り、小春の心は急速に花村へ傾いていく。折も折、小春は山中の腹臣・小谷から陰謀の全てを知った。「べらんめぇ!」その口から久しぶりに胸のすく啖呵が飛び出した。密かに国王のサインを取ってあった権利書は、小春の手により破られてしまった。
その頃、ホテルに帰った国王が、珍しい焼き芋を食べ過ぎて入院するという騒動が持ち上がった。親身になって国王を看護する小春の女らしい暖かい一面にふれた花村の口から、熱いプロポーズの言葉が小春に寄せられた。ようやく条約調印にこぎつけ、大任を果たした花村たちは東京へ帰ってきた。だが小春を待っていたのは権利書を諦めた山中の矢のような借金催促、しかも、かねてから噂のあった大蔵大臣令嬢・上野玲子は一方的に花村との婚約を発表するし、コロンダ国ではクーデターが起きて国王が追放の身となったため、外務省は急に国王一行の永住権を許可しないという変わりよう。花村との結婚は芸者と外交官という身分の違いと勝気な胸に収めたが小春も、国王に対する掌を返すような外務省の冷遇振りには大憤慨、鉄火な気性にものを言わせて直接小村外務大臣にねじ込んだ。この小春姐さんの心意気と、花村を慕う一途な女心に胸をうたれた小村外務大臣は、万事任せておけと大きく頷いた。
数日後、遥かアフリカの空を目指して日航機が飛んだ。再び起こった政変により、王位に返り咲いたアジバ六世一行と小村大臣の粋な計らいでアフリカ領事館勤務となった花村と小春の幸福そうな新婚旅行の晴れ姿が、ぽっかり浮かんだ白い雲の中に消えていった。