1960(昭和35年)/1/21公開 86分 カラー シネマスコープ 映倫番号:11507
配給:東映 製作:東映
力が強くて女にもてて、曲がったことが大嫌いな快青年が、会社内に巣食う悪人一派の陰謀を華やかな宣伝合戦、悩ましい恋愛合戦の真っ只中で叩き潰すという、東映青春スター総出演で放つ明朗痛快巨編。
野蛮で図々しくケンカっ早い上に女たらしという悪名高い万年太郎。彼はヴィーナス化粧品本舗の青年サラリーマンである。その万年太郎が九州支社から東京本社へ転勤して来るという。社内は蜂の巣をつついたように彼の噂で持ち切り。この中にあって、後輩の増田善吉だけが太郎の味方、好奇心半分の若原若子と連れ立って万年太郎を東京駅に出迎えた。若子は、ヴィーナス化粧品本舗美容室勤務のピカ一美人。男子社員全員がハートを射ぬこうと懸命なる奉仕を捧げている御婦人である。さて、若子の、万年太郎への第一印象は、意外にも優秀。悪名高い噂とはおよそ違う彼の快男児ぶりに心を動かされた様子である。加えて、たまたま寄ったとんかつ屋“風流”で、宣伝課長の村田にからまれながら、男らしい態度でこれを撃退した手際を見るや、俄然、万年ファンヘと変ってしまった。まして村田宣伝課長は、若子に色眼をつかう中で最も執拗な自信家で小憎らしく思っていた若子の胸の中、思いがけないこのケンカは痛快な見世物のようなものだった。ところが翌日、このケンカの噂は全社全体に拡がり、万年太郎はまるで極悪人扱い。義憤を感じた若子は、万年太郎を自分の家に下宿させた。彼女の家はお煎餅屋さんで人の良い両親が万年太郎を何くれとなく世話をする。若子のこの勇ましさを見て、憤激したのは女子社員たち。特に良子・桃子・蘭子・久子という連中は、“万年太郎排撃”という誓約書を作って若子を糾明。折も折、九州から万年太郎を追って上京して来た芸者の金魚が、村田課長の計略に乗せられ、社長室で万年太郎への恋慕を訴えたため、万年太郎は社長から大眼玉を食らってしまう。その上、金魚の出現は若子を怒らせてしまった。憂さ晴らしに後輩増田と“風流”で酩酊した万年太郎。ところが、“風流”の一人娘・多美子が万年太郎の男らしさに惚れて下宿先までついて来て甘い接吻をおくる事件が起こり、若子の怒りはおさまらない。
やがて万年太郎が男をあげる日がやってきた。会社の参事室に勤務する青山・杉山・片山の島流し三人組が、万年太郎の素朴な気質を愛し、彼に人気モデルのミス・チェリーの専属引き抜きの大任を与えたのだ。村田課長の嘲笑を浴びながらも活躍を開始した万年太郎は、苦心惨憺の果てに契約に成功する。渋面の村田課長をよそに万年太郎の功績を祝う宴が華やかに開かれた。ドンチャン騒ぎの際中に現われたのは芸者金魚。酔っぱらった万年太郎を下宿先まで送った彼女は、そこで彼の意外な寝言を聞いた。“ボクは若子さんを愛してます”鮮やかな失恋に泣き顔の金魚は、この恋を綺麗に水に流し、若子の感激に満ちた顔には喜びが広がるのだった。
さて、万年太郎の思わぬ功績に躍起となったのは、村田課長とその一派。会社の慰安旅行を利用して、土地の与太者を万年太郎をからませるなど嫌がらせを開始。また、村田課長を慕う良子を手先に使うなど悪謀に限りはない。とことんまで万年太郎脱落を期す彼は、愚連隊丸根組を唆してミス・チェリーにまで狙いを付け、テレビ出演当日を狙い顔に斬りつけるという飛んでもないことを企み始めた。村田の為に一生懸命悪事の片棒をかついでいた良子は、ふとした事で、村田の自分へ対する卑劣な本心を知り悪夢から覚める。すべてを良子から聞き、怒髪天を衝いた万年太郎は東洋テレビスタジオに駆けつけ大暴れ。遂には丸根組も倒し村田課長は完全に敗北となった。だが、村田課長はヴィーナス化粧品本舗の大得意先の息子。悩んだ会社は、村田を参事室へ異動し、万年太郎を北海道支社へ転任させるという喧嘩両成敗の形をとる。そして万年太郎が北海道へ旅立つ日、駅頭で見送る人の中に若子の姿は無かった。列車が出発しションボリと悲しげな万年太郎。だがその背中に「ふふふ…」という軽やかな忍び笑い。「私も北海道へ行くの」そこには若子が日本晴れの笑顔で立っていた…。
「太郎」シリーズ(4)