1960(昭和35年)/1/27公開 80分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11527
配給:東映 製作:東映
東京汐留駅に届いたトランク詰めの死体を巡って、捜査網は東京から大阪へ。お馴染み精鋭捜査陣の活躍を迫真のロケーションカメラで描破した人気シリーズの第12作。
東京汐留駅の倉庫の片隅に、荷主、荷受人共に不明のジュラルミン製のトランクが一つ光っていた。荷札には“ミシン”と記されていたが、漂う腐敗臭がそうでないことを証明していた。国鉄公安官立合いのもとトランクを開けた結果、中には半裸体の女の死体が詰められており、死体の眼からはコンタクトレンズが摘出され、解剖の結果、絞殺による窒息死・暴行の形跡なし、年令30才前後、肋膜を患ったことあり、死後7日ということが判明した。トランクの発送先が大阪天王寺駅であった事実から「トランク詰殺人事件捜査本部」を東京と大阪に設置、この二ヵ所の緻密な連絡によって姿なき犯人に肉迫する計画が練られた。トランクを受けた箱番の証言では、年令25~6歳の色白の男が野球帽の少年を伴いリヤカーで運んで来たという。長田部長刑事と水木刑事は貸しリヤカー屋を洗った。一方、市川部長刑事と林刑事は、被害者が身につけていた下着とコンタクトレンズの線を追い、金子刑事はトランクを探った。その結果、コンタクトレンズとトランクは東京が製造元であることが判明、その報告を受けた東京捜査本部はにわかに色めきたった。
大阪準本部に梅田駅の保管倉庫係が重要な証言を残した。それによれば、ライトバンタクシーで、25歳位で細面で色白の男が、東京隅田川駅から大阪梅田駅に到着したトランクを引取りに来たこと、そして同じ日に25歳位の男が天王寺駅から東京汐留駅にトランクを送っているということであった。つまり、犯人と思われる男が東京隅田川駅から発送したトランクを梅田駅で受取り、ライトバンタクシーとリヤカーを使って天王寺駅に運びこみ、更に東京汐留駅へと発送したのである。かくて捜査の核心は再び東京へ。長田部長刑事、林刑事、続いて金子刑事も、大阪での被害者の身許割り出しを断念して帰京した。
やがて、コンタクトレンズから殺された女の身許が浮び上った。草間文子というその女は、化粧品セールスのため関西方面に出張するといったまま行方不明。だが、銀行預金54万円が、文子ではなく25歳位の色白の男によって引き出されたという。しかも、その日付が、例のトランクを隅田川駅へ運びこんだ日と同じ日であったことなど、新しい事実が渡辺刑事、高津刑事によって報告された。
長田部長刑事、山形刑事は、隅田川駅ヘトラックを運んだ深尾という男を挙げ、泥を吐かせた。彼は隅田館というアパートから25歳位の男に頼まれて、トランクを運んだという。だが隅田館に刑事が踏みこんだ時、既にその男は姿を消していた。管理人の話では、男の名は吉村春夫、30歳位の化粧品セールスの女が、しばしば出入りしていたという。
本部主任は、加害者吉村春夫が被害者草間文子に近づき、10日ほど前、出張間際の文子を自分のアパートで絞殺、預金通帳と印鑑を奪った―という推定を下した。長田部長刑事と山形刑事は吉村の友人関係を洗い、犯人の足どりを追った。
吉村の昔の友人の一人によると、一昨日、吉村が現れ、胸の療養のため、郷里へ帰ると言ったらしい。そして、吉村にはレヴューガールの花山あや子という恋人が居ることも分った。
金子刑事は吉村の郷里へ向かったが、吉村は貧しい父母に現金5万円を与え、既に逃亡していた。
一方、あや子のアパートの張込みを続けた林刑事、山形刑事、高津刑事らは逃亡寸前のあや子を捕えた。ハンドバックからは、現金10万円と博多行きの切符が…。あや子は黙秘を続けたが、かねて捜査二課で追及していた運輸局の川原課長が逮捕され、その口から10万円の出所が割れた。あや子は川原課長とも懇ろな仲であったが、汚職を契機に手切金として10万円を受け取って川原との間を精算、吉村と共に9時30分東京駅発の筑紫号で博多へ逃亡を企てたのだ。待合せ場所は熱海。時すでに11時過ぎ、列車は熱海を出ている。吉村は乗車しているだろうか?
遂に終着駅博多に到着した列車から、突然、男がホームへ飛び出した。山形刑事が、弾かれたように男を追う。格闘の末、遂に殺人犯・吉村春夫は逮捕された。夜はまだ明けない。空には星が淡く光っていた…。
「警視庁物語」シリーズ(24)