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第三の疑惑 

The Third Suspicion

1960(昭和35年)/5/24公開 79分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11686 
配給:東映 製作:東映

頬に醜いあざを持つ宿命の女に近づいて結婚した美貌の青年の凶悪な殺人心理に食い下がる一新聞記者が、幾重にもはりめぐらざれた技巧的トリックを打ち破ってゆく過程を追い、遂には犯罪の全貌を解明するまでを一気に描破するスリラー。

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ストーリー

稀有の財産家で左頬に醜い痣のある梨枝は、美貌の青年・梅沢に夢中になり結婚する。梨枝の弟・黒田弘之と同僚日野は、梨枝より10歳も年下の上に結婚詐欺とモグリの医者という前科を持つ梅沢との結婚を思い止まるように説得するが、聞き入れない梨枝は梅沢と共に八丈島へ新婚旅行に出かける。
バー・ウララの片隅にいた東洋日報社会部記者の日野と弘に、旅行中の梨枝の急死が知らされる。日野は姉の死に愕然とする連れて出航前の朝日丸に駈けつけた。新婚夫婦が使ったという一等船室にはシャネルの香水が充満していた。日野はボーイの口から花嫁の頬に大きな痣があったこと、乗船時から身体の工合が悪く八丈島下船の際は担架であったことなどを確めたものの疑問を覚えるのだった。梅沢が梨枝の死後三時間も経過してから、至急電報でなく普通電報で連絡したことだ。弘之の胸中にも梅沢に対する疑惑が拡がった。
梅沢の八丈島での行動を調べに渡った弘之は、誠実な梅沢の態度に触れ、感動すら覚えて帰京する。一方日野は、梅沢への晴れぬ疑惑を抱いて彼の下宿や勤務先のローズ化粧品を廻ったが、梅沢の美しい人格を証明する者ばかり。だが、重い足を梨枝のアパートに運んだ日野は管理人から妙な事を聞いた。旅行の出発前に梨枝の姿を見なかったことや梨枝の部屋の水と湯の使用量がそれぞれ前月の二倍、三倍だったこと。だが更に日野の期待を外すように、梅沢は梨枝の遺産相続の権利はおろか財産その他一切を弘之に譲渡する。日野は秘かに梅沢のアパートでスリ替えた梨枝の遺骨を分析するが、結果は毒薬その他の反応は皆無であり、愛する姉の遺骨まで勝手に分析した日野の行き過ぎを咎めた弘之からは絶交されてしまう。
流石の日野も重い心でバー・ウララに向かうが、そこで女急の洋子が突然、一日の船で青島へ帰ったということを聞く。そう云えば一日の船は梅沢と梨枝が乗った船。なんでも連れて帰ってくれる人が出来て、下宿、医者の支払いも全部済ませたという。更に意外なことに梨枝が所有していた新潟の山林がそっくり売られたという新しい事実が判明する。買い取った木材会社に飛んだ日野は、一日の朝に梨枝の委任状を持った梅沢が十日以内に支払う条件で契約を交わし、既に金を全額引き出していた事実を知る。梅沢の泥を洗ってあくまで非情な日野は姉を思い梅沢を弁護する弘之と対立。弘之の手に握られた臨終の梨枝の指環を見つめる日野の脳裏をかすめた事実…船室の左側のベッドに梨枝が寝たということ。痣を気にする彼女がわざわざ左側には寝ない。日野は過日ウララの女給・清子から、一日の船で発ったはずの洋子が行方不明になっているという知らせを思い出し、そのままウララヘ向かう。日野の推理通り、清子と洋子が以前にお揃いで作った人造宝石と梨枝の指環は完全に一致した。弘之が持っていた梨枝の指環とは実は洋子のものではなかったのか?それに一日の朝日丸の船客名簿に洋子の名は見当らない。洋子が実は梨枝に仕立てられていたのでなかったのか?更に日野は推理を進める。それは梨枝が住んでいたアパートの水と湯の使用量と八個の大型トランクのことだ。旅行前夜、梅沢は梨枝を殺害して死体を切断し、水と湯で洗いトランクに分けて詰めたのではないか?それから梅沢は巧みに洋子を欺して梨枝に仕立てると、彼女に痣をつけて左側のベッドに寝かせてボーイに証言させようとした。出発日をわざと間違えて折角化けた洋子がバレないよう工夫して弘之の見送りを外し、むせ返る返るほどの香水はトランクの中の死臭を誤魔化すため、更には汚物を始末すると見せかけてバラバラにした梨枝の死体を海に捨てたのでは?
日野は梅沢の一日からの過去を追う。アパートから新婚夫婦を乗せたタクシー運転手が、八重洲××ホテルに降ろしたと証言、ホテルのボーイは男が女の頬に化粧をしている妙なカップルを見たという。男は梅沢、女は洋子ではないか?
ところが新聞に梅沢が投身自殺したという記事が掲載され、弘之あてには梅沢からの遺書が届く。綿々と綴られた亡き梨枝への情愛。弘之は激動する心を押えて涙をのんだ。「姉さんは幸せだったよ……」その傍らには二千万円の札束が置かれてあった。
割り切れないまま遊軍に廻された日野は、ある日、銀行の貸金庫で誰かが自分の名前を利用しているとタレ込んで来た男の話を聞く。化粧品のセールスマンだという男は、梅沢に一緒に九州へ行こうと誘われたらしい。久し振りに日野の眼に力が宿る。銀行の貸金庫には宝石やぶ厚い札束がうなっていた。やがて貸金庫に現れた黒眼鏡の男が逮捕された。梅沢である。山林の取引価格を実際より低くして差額を着服し、九州に連れていった男を身代りに殺していたのだ。

第三の疑惑 
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