1960(昭和35年)/2/3公開 62分 モノクロ シネマスコープ 映倫番号:11538
配給:東映 製作:東映
莫大な公金を横領した犯人を巡る三人の女と、三転四転する事件に火花を散らしスクープ合戦に活躍する特ダネ記者をドキュメンタリータッチで描いた迫真編。
新聞社の社会部には時折とんでもないいたずら電話が入る。日本新聞社の若手敏腕記者・清水も今日は朝からまんまと引っ掛ってしまった。通報現場には、新婚夫婦のピストル射殺死体どころか特ダネのかけらも転がっていなかったが、清水が通報者と間違えた女性が絶世の美人だったのがせめてものなぐさめ。ところが、その彼女も待ち合せの青年と高級車で走り去ってしまい、意気消沈して社へ戻って来たところに今度は正眞正銘の大物事件が待ち構えていた。公金横領の犯人が割れ、逮捕をめぐってのスクープだ。勿論清水のライバル、毎朝新聞のベテラン事件記者・大木も噛んでおり、いやが上にも清水の闘志はかきたてられる。犯人は菊山という商工省の若い役人で、清水はその逮捕現場をかぎつけたが、そこには抜け目ない大木の顔も。だが清水は、以外な事に気がついた。先日、清水がいたずら電話の主と間違えた美人女性を高級車で迎えに来た男が、犯人の菊山だったのだ。清水は、早速その足で美人の女性の住居をつきとめた。女性は石崎由美子といい、洋裁学院に通学中。資産家の息子というふれこみの菊山とは以前、銀座のバーでアルバイトをしていた頃に知り合ったという。清水は、由美子の記事で大木にささやかながら一歩先んじることが出来た。一方菊山は、浪費した公金の残金六千万円の行方については、東京駅八重洲口のロッカールームで盗られたという以外は口を割らなかった。捜査二課は菊山の裏付捜査に注力し、まずは人気歌手・花村冴子が召喚された。菊村は冴子に相当な金をつぎ込んでいるらしい。更に菊山は、黒田ノリ子というアプレ娘とも関係があり、菊山が彼女にスポーツカーを買ってやったという事を清水は菊山の差し入れに来たノリ子自身の口から知る事が出来た。菊山をめぐる由美子、冴子、ノリ子の三人の女。公金の行方を握る鍵はそこにあるのではないか?取り調べの結果、冴子のマネージャー・仁木が、実は良人であり、菊山との関係は単なるパトロン程度のものと分った。アプレ娘のノリ子には、菊山も六千万円の秘密は預けないだろう。清水はそういう見解から、残る由美子に疑いを抱き始めた。その頃、由美子は兄の三郎と帰郷しようとしていた。だが二人は兄妹ではなく、実は恋人同志だったのだ。由美子は三郎と共謀して、菊山を手玉にとっていたのである。計らずも三郎とつき合いのあったチンピラから特ダネを提供された清水は、急拠東京駅に駈けつけ、公金入りのボストンバックを片手に高飛び寸前の二人につめ寄った。激しく殴りかかる三郎に屈せず立ち向う清水。激闘の末、三郎と由美子は張り込んでいた刑事たちに逮捕されたが、バッグの中に六千万円は入っていなかった。茫然とする由美子と三郎を見下して清水も思いがけない失望に打ちのめされた。いったい六千万円は誰が持っているのか?
「特ダネ三十時間」シリーズ(10)